かじさんのつれづれなるままに

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過去のない男

過去のない男

2002 年 フィンランド 
 
久しぶりに アキ・カウリスマキの作品を見ました。
この監督の作品は淡々としてそこはかとなくユーモアが漂っています。
今回の作品も状況は悲惨なのですが、悲惨さは感じません。
 
主人公は列車に乗ってある町にやってきました。
ところが、ベンチでうたたねをしている時にチンピラどもに暴行を受け、
瀕死の状態になります。
命は助かりましたが、持ち物も財布もなく、記憶も失っていました。 
ほらね、悲惨な展開でしょう?

主人公は古いコンテナに住む一家に助けられます。
そして次第にけがも回復します。
それからどうしたらいいのでしょう? 
警察に行って調べてもらう? 
犯人をつかまえる? 
そんな展開にはなりません。

主人公はとりあえず住むところや仕事を探します。
コンテナに住む一家の助言で、彼もコンテナに住むようになります。
これって、ホームレスみたいな境遇なのでしょうか? 
こういうコンテナに住む貧しい人たちが他にも少なからずいます。
彼らは救世軍の食事の施しで、パンとスープにありつけます。
主人公もそうします。
失業者やホームレスの仲間入りをしたという感じでしょうか。

所持金も記憶もなく、知らない町で貧しい人たちと生活をする、
というと悲惨な状況にきこえます。
でも、アキ・カウリスマキの作品には悲惨さがありません。
淡々と現実を受け入れ、その場でできることをします。
無理にハッピーな気分に盛り上げる必要はないし、
状況は悲惨にみえても悲惨にならない生き方もあるのです。
過度に悩んだりしなければ。
俺はこんな浮浪者じゃないのに・・・などと考えず、
ジュークボックスを拾ってきて修理して聴いたり、
ささやかな庭?にジャガイモを植えて育てたりすれば、
そんなにひどい生活でもないのです。
それに、過去をなくしたおかげで結果としては
主人公は新しい人生を歩みだすことができたようです。

ところで列車のなかで流れていた、あの日本語の曲は何???