かじさんのつれづれなるままに

映画や読書 スポーツ(相撲)についてぼちぼち書き込むブログです

『楽園』

人類はなぜ海を渡ったのでしょう?

楽園

鈴木光司 著  新潮社
      

(ずいぶんと以前のことですが、)鈴木光司の『楽園』を読みました。
三つの章に分かれていますが、ここでは第一章の「神話」について。

いつの時代か分からない、遠い昔の物語です。
古代ユーラシア大陸に住んでいたある部族が他の部族に襲撃され、
主人公 ボグドが最愛の妻 ファヤウと生き別れになるというストーリーです。
妻は襲撃してきた部族に連れ去られました。
自分たちの部族をほぼ皆殺しにされて、生き残ったボグドはどうしたでしょう? 

妻を取り戻すため、村を襲撃した部族の後を追いました。
村を襲い妻を奪った部族は、新たな土地を求めてベーリング海を渡ろうとしていました。
彼らの後を追って、主人公ボグドも北の海へと向かいます。

この物語を読みながら、「グレート・ジャーニー」のことを思い浮かべました。

約400万年前に東アフリカに誕生したといわれる人類は
アフリカ大陸からアジアへ、シベリアへ、
そしてベーリング海を渡ってアメリカ大陸へ拡散していったといいます。
(関野吉晴氏が「グレートジャーニー」で、実際にたどりましたね。)

『楽園』を読んでいると、その「グレート・ジャーニー」のことが
具体的なイメージをともなって思い浮かぶようになりました

ボグドが妻をさらった部族を追って何日も歩いたように、
ひとつの部族が新しい土地を求めてベーリング海の「廻廊」をめざしたように、
こんなふうに人類は新しい土地へと進んでいったのでしょうか?

地図も飛行機もない時代に、どんな苦労をして新しい土地を目指したのでしょう?
陸続きの土地を歩いて(もしくは騎馬で)移動するのも大変なことです。
海を渡るとなると、さらに未知の危険があります。
一体、どうして人類は海を渡ったのでしょう?
古代の人々はどんな航海術を持っていたのでしょう?

大航海時代だって、現代からみれば十分な地図も機械もなかったのに、
それでもあの時代の人々は海へ出て行きました。

古代にも、舟で太平洋に漕ぎ出して、
かなり遠くの島に渡った部族がいたらしいです。
いったい、どんな装備で、どんな技術で海を渡ったのでしょう。

どんな危険が待ちかまえているかも分からないのに、
それでも見知らぬ大陸を目指して舟を漕ぎ出そうと、
人を駆り立てるものは一体何でしょう? 

もしかすると、妻を探し求めるボグドのような情熱が、
人類に海を渡らせたのかもしれません。
そんな想像をかきたててくれる作品でした。