かじさんのつれづれなるままに

映画や読書 スポーツ(相撲)についてぼちぼち書き込むブログです

母なる大地 父なる空

大相撲が終わって気が抜けた毎日を送っています。
大変久しぶりにブログを更新してみよう。
本日は本のお話です。
しかもかなり以前に読んだ本のことなのですが。

『楽園』を読んで、古代の物語に興味がわいたので、
その後に読んだのが
スー・ハリソン著
『母なる大地 父なる空』(上・下)  晶文社
でした。

舞台となるのは紀元前7000年のアリューシャン列島。
ストーリーは『楽園』のボグドとファヤウの物語を連想させます。
主人公は〈黒曜石〉という名の少女で、彼女の村は、突然襲撃され部族は全滅します。
そして恋人とも死別します。
生き残ったのは〈黒曜石〉たったひとりでした。
村人の埋葬を一人で行った後、彼女は祖父のいる〈クジラ狩り族〉の村を目指して舟をこぎ出します。
その途中で、彼女は〈古に遡る〉という老人が一人で住む浜にたどり着きます。
そして、・・・
以下ストーリー省略。

ストーリー自体は単純ですが、この物語が私にとって面白いのは
古代の人々の生活様式が具体的にこまごまと描かれていることです。
著者はアメリカ先住民の言語、考古学、人類学、地理学を学んでいるので、
古代の人々の道具や生活習慣などが十分な知識によってしっかりと描かれています。
物語としても面白いし、「読んで楽しむ考古学、民俗学、人類学」という趣があります。

〈黒曜石〉はどんな服を着ているか、男たちは海でどのように漁をし、
女たちは家でどんな作業をするか。どんな風に食べ物を調理するか、
そういうことがこと細かに分かります。
それから、合理的な思考になれた現代人には分かりにくい、
古代人の考え方、感じ方について描かれた記述も興味深いです。
たとえば、人は死ぬと〈光踊る国〉へ行くという死生観があります。
埋葬のときには武器も一緒に埋めるというしきたりや、精霊に対する信仰のことも書かれています。
現代ならばからしい迷信と言われそうなことかもしれませんが、
この時代、この物語の中では一つ一つが理にかなった自然なことに思えます。
あらゆるものを自分たちで調達し生活技術を持ってしっかりと生きていく人々の姿があります。
そのたくましさに私は引き付けられます。
もちろん、主人公の過酷な運命と、その運命を生き延びる力強さも
この物語の魅力となっています。